pu-log’s diary

たくさんの物語と出会うことを今年の目標とする。

意外と真面目!「メガ・クロコダイル」感想

「地獄島」で消息を絶った弟を捜索するため、姉は島を2度調査した実績を持つ生物学者に同行を依頼した。人食いワニが3000匹生息し、毒ガスが広範囲に充満していることからその名がつけられた恐るべき島で、次々と襲い来る野生の脅威。人間とモンスター、生き残るのははたして・・・。

メガ・クロコダイル(吹替版)

中国で2021年に制作されたモンスターパニック映画である。映画を愛する聡明な方々はご承知のことと思うが、パッケージはあくまでイメージなので内容との齟齬は気にしないでほしい。この手の映画によくある主張を強くしすぎただけの、ただの誇張表現だ。実際は陸上での戦闘しかないし、ここまで恐竜サイズのワニが出てくるわけでもない。思ったより真面目に作られていて、ヤジを飛ばしたくて見た私としては感想をどう書いたものかな、と現在進行形で困っているところである。
 

簡単感想

モンスター映画としてだけではなく、未知の島を探検する冒険映画としても楽しめた。ところどころオカシイナーと感じる箇所はあるものの、「細けえことは気にすんな」と言われれば「それもそうだな」と流せるくらいのかわいいものである。見どころは、残念ながらワニではなくそれ以外の生物。人体に侵入するヒル、声真似をしてエサを誘き寄せる甲虫といった突然変異体に襲われる場面は、虫恐怖症でなくとも鳥肌ものだ。メガ・クロコダイル誕生の理由もきちんと考えられており、シナリオ面でも手抜きは感じられない。巨ワニがもっとアグレッシブに襲ってきてくれていたら、なおのことよかった。私の評価は★3.2。同じ中国資本による問題作で免疫を獲得しているため、若干甘めかもしれない。

ワニがんばろう

中華マイナー映画の問題児「ジャイアント・スパイダーズ 巨大クモ軍団の襲撃」は、よかった探しの得意な私が初めて★2以下をつけた記念すべき作品である。個人的に中華マイナー映画界の必須視聴作品と思っているので、時間が許すのであればそちらを見てから今作に取り組んでいただきたい。そのほうがより、まともな内容であることを分かっていただけるはずだ。まともと言っている時点でかなり失礼な気もするが、もろもろ鑑みた率直な意見として賛同してくれる人も多いだろう。
 
さて、この作品を観るまで私は中華のマイナー映画に対して手抜き、適当、手あたり次第というあまりよくない三大イメージをもっていたのだが、このたび「作り手による」という当たり前のことに改めて気づかせてもらった。パラシュートもなしに輸送船から飛び降りる一向においおい、と最初は思ったものの、特殊生物のアミューズメントと化している地獄島の探検を眺めるうち、気づけば地獄のピクニックにツッコミを入れつつ楽しんでいる私がいた。この手のパニック映画は単に逃げるだけの内容になりがちだが、サスペンスも取り入れた複雑なシナリオにしているのも好印象だ。芯を食ったセリフで、おっ、と思わせる場面もたびたびあった。
 
ただ、巨ワニよりインパクトのある遺伝子組み換え生物を登場させてしまったせいで、肝心のワニの恐怖が半減してしまうという本末転倒なことになってしまっているのが残念だ。大は小を兼ねるというが、ことホラー・パニック界隈に関しては小さな群れのほうがやっかいであることが往々にしてある。どうせ遺伝子組み換えしているのだから、大きかろうが小さかろうが大した問題ではない。虫やら草やら余計なものを登場させずに全部ワニで表現すればよかったものを、変なところで常識が働いてしまったあたり監督の真面目な人間性がうかがえる。もう一匹巨ワニ登場させて番で暴れさせるとか、ワニが体内に入って子どもを産んで内側から食い破るとか、むしろワニをナノ化して人間の脳に寄生させてワニ人間にするとかしたほうがワニランドも盛り上がったんじゃないカナー。
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この映画の主戦場である地獄島に多くの突然変異体が生まれた理由であるが、ネタバレすると遺伝子研究の副産物である(と思われる)。ヒトの超多剤耐性菌(抗生剤が効かなくなった細菌)にワニのたんぱく質なら勝てることがわかった実験者たちが、七種の生物遺伝子を掛け合わせメガワニを生み出した。その血液からガンの抗生物質を作る実験をしていたのが、この地獄島だ。遺伝子を掛け合わせる過程で何らかの手違いがあり、人を襲う巨大ハエとり草や人体に寄生するヒル、死体に潜り込んで本人の声真似をする芸達者なゾウムシが生まれてしまったのだろう。もはや手違いでは許されない人類史終焉レベルのミスであるが、施設員は例のごとく全員死亡したので責任の所在は不明確である。
 
施設の大きさと比べて明らかにサイズオーバーな巨ワニが地下にある実験施設からどうやってエレベーターに乗り地上に出たのかも、多くの人が疑問に感じるところだろう。おそらくだが、ワニを管理するにあたり水族館のように大量の水を入れ替えることのできる水槽があったのだ。おそらく壁はガラス張りなので、おそらく巨ワニであれば体当たりで破壊することは可能なのだ。あくまで想像なのでおそらくばかり言って恐縮だが、このようにオカシイナーと感じる箇所については視聴者がすすんでつじつまを合わせにいくことも、マイナー映画を観るうえでの大切なマナーだ。
 
今回はいつもより短めの感想で終わり。まともな映画だと筆が進まないなあ。モンスターパニックというジャンルにありつつハプニング満載の探検がおもしろい作品だった。ゲーム化してもいいかもしれない。