pu-log’s diary

たくさんの物語と出会うことを今年の目標とする。

やりゃあがったな!「ビッグフットVSメガロドン」感想

あらすじ

星歴4044年の銀河、地球人のカリ王女によって結成された宇宙反乱同盟軍(人間)と爬虫類人(グレイ)の秘密結社アルコン軍との激しい戦闘は、同盟軍の勝利によって終結した。銀河は終戦を迎え平和を取り戻していたが、アルコン軍の残党を率いるジョセフ・スターリン将軍とオカルト主義者のアレイスター・クロウリーナチスの秘密実験により誕生したメガロドンを操り、アルコン軍による暗黒時代を築こうとしていた。

ビッグフットVSメガロドン(字幕版)

全編CGアニメで制作されたスペースオペラ。主演のマルコ・グズマンは日本の山寺宏一的な職人らしく、複数の配役を担当している。ヴァン・ヘルシング、ビッグフット、スターリンの演じ分けを聞き比べるのもおもしろいだろう。
 

簡単感想

あらすじのとおり人間+フットVSグレイときどきメガロドンという内容で、彼らはそれぞれの組織を象徴するイメージキャラクター的存在である。ビッグフットとメガロドンの直接対決はなく、メガロドンは品種改良されサメ人間となっている。サイズは大幅に縮小され、戦うことがないどころかほぼ動かない。つまりタイトル詐欺ならびにジャケット詐欺であるが、低予算映画にはよくあることなので気にしなくていい。

視聴しながら同じくCGアニメの「ビーストウォーズ」が連想され、もしかしたら子ども向けに制作されたのカナーと思いながら見ていたら後半から率直すぎるセクハラ発言が連発されて、久々にあっけにとられた。アニメだからといって家族団らんの席で見てしまうと親御さんはマジで返答に苦慮する質問攻めにあう可能性が高い。これからそのあたりを中心に説教をしていきたいと思うので、お時間ある方はお付き合いいただきたい。私の評価は★2.8。話の筋道はしっかりしていたし、70分でさくっと終わるのもいい。

 

クセの強い人しかいない宇宙戦争

本題に入る前に、まずは感心したことを申し上げたい。それはピンチをチャンスに変えるアイデアの大切さについてだ。冒頭でもお伝えしたとおり、今作ではマルコ・グズマンさんが主役を含め一人で6、7役をこなしている。「彼岸島X」で効果音まで声優が担当していたことを考えるとミサイルや爆発の音も彼が担当していたのかもしれないが、エンドクレジットには書いていなかった。
 
※こういう映画を好んで見る人たちは有事の際の持ち物リスト一番目が「丸太」であると信じているが、もし「彼岸島X」をまだ見ていない人がいるならアマプラにもあるのでこの機会にぜひ視聴してもらいたい。
第1話 丸太
 
一人の声優が配役を兼務していることからも察することができるように、予算も相当ひっ迫していたに違いない。限られた予算内でクオリティを極力下げずに満足のいく映像にするにはどうすればいいのか、CG面で感心する工夫がなされていた。
 
表情を動かさなくてもいいよう人間に終始宇宙服を着せていただけなのだが、これが単純と見えて意外と効果的。顔が見えない分想像力を掻き立てられ、感情移入が逆にしやすかったのだ。見ている側としてはぎこちない雑な表情をされるより、メットをかぶっていてくれたほうが不快感なく映像に集中できる。
 
フット、グレイ、メガロドンについては表情もなく口だけパクパクさせて、歩いたり棒立ちしたりするだけだった。思い返せば人間含め、立ったり座ったりといった動作をする人はいなかった気がする。まあいい。
 
CG界のことはよくわからないが、汎用性のある動きを使いまわすことはかなりの経費削減につながるのではないだろうか。クリエイターの仕事とは、決められた予算で、決められた納期に、決められた一定のクオリティを保つ作品を納めることと述べている人がいた。そのことを思い出し、今作のCGクリエイターさんは優秀な方に違いないと感じた。少ない予算でもアイデア次第で視聴に耐えうる作品にできるのだ。
 
さて、ここから説教を始める。シモの話もするので、苦手な方は先頭にお戻りください。先頭へ戻る
 
一つ目はメガロドン詐欺についてだ。今作のメガロドンナチスの不敬な実験により古代の体が破壊され、人間と両生類軟骨魚の掛け合わせた凶暴な戦闘マシンとして再構築された生物である。マイナー映画界ではナチスがフリー素材となっているのか何でもかんでもナチスのせいにすればまるく収まると思っているふしが見受けられるのだが、いくらクソ映画で慣らした私であってもサメ人間になるのは予想外だった。手足がはえるならサメでなくともサバでいいじゃない。最近別の映画でも言った気がするが、監督さんもいい年をした大人なのだからカッコイイ字面だけでサメを選ばないよう今後は気を付けていただきたい。
 
二つ目の説教は、マニアックな下ネタを平和なお茶の間に持ち込もうとしたことだ。舞台は地球滅亡後の宇宙であり、故郷を失った人類は絶滅の危機に瀕している。そのような状況で考えるのは当然種の保存であり、そこにつけこんだ爬虫類人たちの作戦はメガロドンの特殊なDNAで化学兵器を作り、人間を爬虫類に退化させ内部から破壊していくというものだった。その作戦を考えたのが、爬虫類軍でオカルト主義者のクロウリーである。
 
このクロウリーがとんでもない変態で、一般人には理解不能な特殊性癖の持ち主であった。死体愛好家でありカニバリスト。生きている女もいいが、死んだ女は抵抗が少なくてかえって好ましいらしい。そして食事に聖なる精〇をかける。心地よい塩味がすウォアーーーー!
 
好奇心旺盛な紳士淑女ならご存じだろう、日本のAビデオ界には〇液パンというジャンルがあることを。ジャンルという言い方が正しいのかはわからないが、たくさんの汁たちが精〇を食パンに提供し、それを女優さんがいただくという企画ものだ。このパンとカブトムシの素揚げが並べられたら、私は迷いなくカブトムシを選ぶ。だからといってボクのボクがカブトムシに負けたと悲しまなくていい。「心地よい塩味」と言ってはいるものの、生産者の体調によってはのどが再起不能になるほどのダメージを受けるのだ。それならカブトの角のほうがのどに優しい場合もある。
 
そんなことはどうでもいい。セクシー女優でもないのにそんな寄食を好む爬虫類人のみならず、彼らに対抗する人間たちのリーダー・カリもなかなかのズベ公で褒められたものではない。情緒が生殖のみに働いており、「種さえあればアンタは不要」と恋人であるヘルシングに面と向かって言うあたり、高慢ちきでいけすかない女である。人間自体が少ないため選択肢がないという事情もあるのだろうが、一応恋人なのだからもうちょっとオブラートに包んで飲み込みやすい言葉にしないとヘルシングヘルシングも立ち上がることができないぞ。
 
身体だけの関係を恋人と呼べるのかについてはかねてより議論がなされているところではあるが、同盟軍、爬虫類軍の人格がおかしなことになっている中、まともなのは第三勢力のメガロドンだけであった。ボットとよばれるAIロボットと心を通わせ、故郷である地球を破壊した同盟軍を憎んでいた。
 
自身を攻撃してきた同盟軍に、「地球を亡ぼすだけでは満足せずに、触れようとするものはすべて破壊しようというのか」と怒りもあらわに立ち向かっていく姿はまぎれもなくヒーローそのもの。クソ映画の見過ぎかナ、メガロドンに抱かれてえ。私的に、メガロドンは完全に正義の側であった。正義は立場によって異なるという講釈は、今作に限り見送りたい。だって人間性欲の鬼だし爬虫類人変態だしね?
 
話は尽きないが、以上で説教というかヤジを終わりにする。70分程度の中編映画ながらネタの宝庫であることは十分伝わっただろう。興味を持たれた方は、そういう映画なのだと割り切ってぜひ楽しみながら観てほしい。くれぐれも一人でね。