pu-log’s diary

たくさんの物語と出会うことを今年の目標とする。

サメがにぎやかしてくる「海底47m 古代マヤの死の迷宮」感想

あらすじ

いじめられっ子の女子高生ミアは気弱な性格で、父親グラントの再婚相手の娘サーシャとの関係もぎくしゃくしていた。マヤ文明の遺跡を研究する考古学者のグラントは、2人の距離を縮めるため、週末に自身の研究場所近くで行われる、船中からサメを鑑賞する観光ツアーへの参加を姉妹に提案する。
迎えた当日、グラントに連れられてツアー会場にやって来た姉妹は、グラントが研究場所に向かった直後に現れたアレクサとニコールから、もっとスリリングな遊びをしないかと誘われる。それはマヤ文明の遺跡が眠る海底洞窟に潜るケーブダイビング。通常のダイビングよりも遥かに危険なアクティビティだ。姉妹はダイビング初級だったが、その魅力的な誘いに乗り、不十分な装備のまま、海に潜るのだった。(公式サイトより)

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簡単感想

サメが燃えていなかったり空を飛んでいなかったり、頭が複数なかったり手足がなかったりすると「あれ? 今作のサメちょっとオカシクね?」と感じるようになった今日この頃。いたって普通のサメが出てくる作品を見るのは久しぶりである。
 
内容としては4人の女学生による海中迷路の脱出劇で、サメ映画ではなかった。だからといってマイナー映画お決まりのジャケット詐欺などではなく、ちゃんとしたサメがちゃんと襲ってくる。物語を盛り上げるポイントは、海中物の定番であるボンベのタイムリミット、そして最新技術を駆使したフルCGの巨大ホオジロザメ、あとはタイトルにもなっている出口の見えない迷宮の恐怖だ。閉塞感の中、どこからサメが襲ってくるのかわからないスリルと迷路の特性を生かしたパニックで、なかなかにドキドキさせてくれた。
 
私の評価は★4。そんなことより現地に到着してから本題に入る前までのJKたちのたわむれが愛おしすぎて1000往復くらい見てしまったので、サメは後回しにして早速そこからヤジを飛ばしていきたいと思う。本編の感想にすぐ飛びたい方はこちらからどうぞ。

 

迷路の中の鬼ごっこ

サーシャ、アレクサ、ニコールの仲良し3人組にミアが加わる形で始まるアドベンチャー、イギリスJK(米英合作らしいが、きっとロイヤルなイギリス女子)が尊すぎて物語の先に進むことができなかった同志はいるか。
 
そんな同志に問いたいのだが、彼女たちはスールの契りを結んでいることに気づいたか。何のことだかわからない人はお手数でも検索してもらいたいのだが、特にニコールとミアは距離感のバグり方からしてそうとしか思えなかった。下校場面に男子が見当たらなかったことからも、彼女たちが通っているのはリリアン女学園高等部イギリス支部に違いないと確信している。そんな支部があるかは知らないが、今作った。
 
具体的に心を掴まれたのは、決戦の地に到着してからだ。ミアをいじめていた女子に中指を立てるサーシャと、いじめっ子を見て「でも美人」と意味深な笑顔を見せるニコール。笑い合いながら車を発進させる無邪気な姿があまりに可愛くて、食べていた饅頭が口からボトリと落ちた。中指にキスするニコール小悪魔すぎんか。彼女がのちのお騒がせ役となるわけだが、とてもキュートなやんちゃっ子で、やたらミアにベタベタすることからも私の最推しとなった。
 
その後、みんなでたわむれながら海底洞窟へと向かうシーンがまず最の高。青春ソングをBGMに、海岸線を走る車の中はすでにパーティだ。マジてえてえ。
 
現地に到着し、崖の上からニコール、アレクサが次々飛び込む中、尻込みするミア。その手を握り「跳ぼう」と勇気づけるサーシャ。見つめ合う絵が完全に百合。気づけばニヤけていたのだが、おそらく切腹もののひどくだらしない顔をしていたと思う。一人で見ていてよかった。
 
みんなでふざけあったり水に浮かんで空を眺めたり、女子がわちゃわちゃすることでしか得られない栄養素って確実にあると思うんですよ。個人的ベストをあげるなら、ニコールがミアの肩に頭を乗せたシーン。日差しをあび水滴を輝かせながら、少しふくよかなミアの肩に頬をよせるニコール。奥ではさりげなくサーシャに抱き着くアレクサもいて、極まりすぎて4人がスローモーションに見えっちまう、と思ったら実際にスローモーションになっていた。
 
つまり製作者側も4人の姿を抒情的に描写することにより、青春のすばらしさと彼女たちが友情以上の絆で結ばれたことを暗に表現したかったのだと捉えられる。夕日を見つめながら彼氏の肩に頭を乗せる彼女という構図ならこれまで星の数ほど見てきたし、やたらとミアに抱き着くニコールからして製作サイドと完全に解釈が一致しているとしか考えられない。ここまで「この脳内おじさんバカか?」と思われたかもしれないが、私の見方は間違っていないと明らかに示された演出であった。
 
ここまでの描写はのちの悲劇をより際立たせるための伏線という見方もあるだろうが、第一解釈は百合だったという結論が出たところで本題に入る。何の話だっけ、そうだマヤの迷宮だ。

 
 

 

迷宮探索にモンスターが出没するのは神話の時代からよくある話だが、海中を舞台とすることによりモンスターをサメに置き換え、説明がつけられる表現として現実的にしている点がとてもよかった。フルCGのサメも迫力があり、盲目であることを表す体中の傷がリアルさを一層際立たせていた。
 
あと、この作品のサメは脅かし方がとても上手。迷路の中は限られた光源しかないほぼ暗闇のうえ、砂ぼこりが舞えば一瞬で視界が真っ白になって何も見えなくなる。サメ側は深海魚同様、目が見えない代わりに他の感覚器官が鋭くなっているため、こちらは見えないのに相手には気づかれていて、いつの間にか目の前にいるという極限の恐怖が常に襲ってくる。加えて出口のわからない海中迷路は激しい潮流が起きている区域もあり、彼女たちへの試練は尽きない。
 
どの作品でも必ず一人いるお騒がせメンバーについては、先に申し上げた通りミアとスールの契りを結んだニコールが担当していた。洞窟に入ることをごり押ししたのも、出口が塞がれてしまったのも、せっかくの生還チャンスを台無しにしたのも、全部彼女の奇行の結果である。最後の場面にいたっては「誰かこのバカを海に沈めろ」と全視聴者が思ったに違いない。あれは私もヤンチャが過ぎるな、と思った。推しがこのようなことをして誠に申し訳なく思う。
 
 
まとめとしては、ホラーとしてだけではなく少女の成長物語としても見ることができる、たくさんの要素をうまくミックスした満足度の高い映画だった。臆病でビクビクしていたミアが次第にたくましくなっていき、サーシャと固いきずなで結ばれたすがすがしいラストがとてもよかった。