pu-log’s diary

たくさんの物語と出会うことを今年の目標とする。

若年層向けホラー「”それ”がいる森」感想

“それ”がいる森

簡単感想

久しぶりに、どこから手を付けていいのかわからない映画を観た。
 
初めに評価を申し上げると★3である。ただし私は飽きずに見ることができれば大体★3をつけてしまうので、つられて観た後で「時間を返せ、このメス豚チャーシュウが」と言われても責任は持てない。ネタバレありで強めにヤジを飛ばしていくので、お時間のある方はお付き合いいただきたい。

 

小学生向けのホラー映画

この手の何が言いたくて制作されたのかわからない映画は、B級として見方によってはある程度の評価が得られそうなものであるが、世間の評価は正しく★2.3であった。悲しいかな、外国人には寛容になれるのに同族相手にはおのれを厳しく律する日本の国民性が出てしまったようだ。
 
なぜに世間が冷たいのかと言えば、主演・相葉雅紀、準主役の息子役がジャニーズJrの上原剣心くんと言えばご賢察いただけるだろうか。製作に藤島ジュリーK.の名前があるとおり、今作が内容など二の次の、彼らのために作られた物語だからである。だから何だという話で、タレントのために映画が作られるのは国内外問わずよくある話だ。プロなのだからたとえ案件だったとしても内容で黙らせればいいだけの話である。それが叶わなかった末の評価なわけだから、最も罪深いのは脚本家だと私は考える。
 
まず、子どもたちの情緒がおかしい。一也がはじめて転入の挨拶をする場面、女子の「イケメンじゃん」「なあに、好みのタイプ?」と色めき立つおませぶりも気になったが、それを見て「女にちやほやされていい気になってんじゃねえぞ」と敵対心をむきだしにする男子たちに一体何が起こったのか。可愛い顔をしてずいぶんとチンピラみの強い小学生である。私の認識不足で令和の小学生はクラスメイトを女呼ばわりするのが一般的であるというなら申し訳ないが、昨今ではVシネマでしかお目にかかれない発言に思わず失笑してしまった。
 
この小学校は生徒だけではなく教頭先生についても失笑もので、ステレオタイプに嫌味を言う姿は昭和の映画を見ているのかと懐かしさを覚えるほどである。とにかく、主演含めて人物設定とセリフが雑。いくら演技派の江口さんや小日向さんがいるとはいえ、場面の大半を占めるのは相葉くんと演技つたない小学生たちである。そこに何の変哲もない内容、何のひねりもないセリフ、何も考えられていない人物たちとくれば、開演されるのはお遊戯会である。
 
何もかも特徴がない、そりゃそうだ、二人のための物語なのだから。二人が目立ってくれればそれでいいのである。その他はどうでもいいというのもビジネスとしては理解する。だが、そのことを隠そうともしないあつかましさは度し難い。
 
「それ」についても早い段階からチラ見せがなされ、正体が明かされるシーンでは怖いとか驚くとか一切なく「ああ、やっぱり君だったのね」と自分の想像が正しかったことを確認する始末であった。本気で怖がらせる気があるのかないのか、ホラーに括られながらホラージャンルに忖度する気がないというのも、おかしな話である。
 
ただ、アマゾンで「小学生の子どもは楽しんで観ていた」というレビューを見て、ああそうか、と腑に落ちたところもある。小学校が舞台であることやJr.のターゲット層に低年齢児も含まれていることを考えると、わかりやすい内容にして年齢問わず楽しんでもらおうという意図があったのかもしれない。控え目な恐怖表現や襲われるのが子ども限定というところからも、その思惑を伺うことができる。
 
もっと前向きな意見を言えば、子どもだましと酷評した人も飽きずに見れたのではないかと思っている。ここまで述べてきたようなたわいもないシナリオながら、中だるみを感じる場面がないのだ。中田秀夫監督はきちんと仕事をしていた。
 
子ども向けの作品を一人で見てしまった私としては手放しでおもしろかったとは言えないが、つらつら駄文を重ねるうちに観る世代によっては悪くない内容であることがわかった。そのようなこともふまえて、やはり評価は★3である。世代としては、あの相葉くんがお父さん役をするようになったのか、としみじみ感じ入る作品でもあった。