pu-log’s diary

たくさんの物語と出会うことを今年の目標とする。

ヘビみ不足「シン・アナコンダ」感想(映画)

あらすじ

南米、コロンビア。遺跡調査のためエスカパダ島にやって来たマローン博士と助手の学生たち。だがそこで彼らは、想像を絶する巨大ヘビ、体長20メートルのアナコンダに遭遇する。怪物にのみこまれ、次々と犠牲になっていく若者たち。しかも、ジャングルに生息している化物は、ヘビだけではなかった。巨大蜘蛛も、獲物を狙っていたのだ。救助隊を待ちながら、決死の戦いを続ける博士たち。彼らは生きてこの島を出られるのか?(パッケージより)

シン・アナコンダ(吹替版)
 

簡単感想

原題は「Megaboa」、低予算映画の老舗アサイラム産のモンスターパニック映画である。
 
おとぼけ教授と学生たちが上陸した孤島はヘビの楽園だった。さぞかし壮絶な戦いが繰り広げられるのだろうと期待も大きく見始めたわけだが、肝心のアナコンダが画面に登場しない。正確には頻繁に出てきて追いかけてはくるものの、カメラがアナコンダ目線なものだから見えるのは逃げまどう人間の姿ばかり。低予算ゆえ知恵を絞った結果、ヘビ映画でヘビの露出が少ないというバグが起きてしまったようだ。
 
登場人物にパッケージからイメージするような勇ましさはなく、アクションシーンはほぼゼロで残酷描写も控えめ、そして中央のポニテネキおま誰。見せ場であるダイナミックな捕食シーンも肝心のパクつく瞬間が割愛されており、いい風に言えば心臓が悪い人でも落ち着いて見ることのできるモンパニ映画であった。
 
私の評価は★2。アナコンダが出し惜しみされているだけではなく、全体的に何となくぼやけている。盛り上がりに欠ける原因はそこだと思うので、少し考えてみた。
 

 

シン・アナコンダってそういうこと?

実は、この映画を見たのは数週間前である。これまで何度も感想を書こうとパソコンの前に座ってはいたのだが、言葉がまったく浮かんでこなくて放置していたのだ。同じようなクソ映画をいくつも見てきて、読む人の迷惑を考えもせず長々とヤジを飛ばしてきた私が、なぜこの作品だけできないのか、朝夕に限らず頭を悩ませる日々を送っていた、マジで。
 
ぐだぐだネットを回遊しているうちに原因がわかったので結論から申しあげると、明確な主人公がいないせいだった。小学館マンガワン編集部の合宿動画の中で語られていたことなのだが、人間の脳は事象だけでは興味がそそられないよう進化しているらしい。この映画で言えば、事象はもちろんアナコンダ。では、何を加えれば事象に興味がそそられるのか。それはキャラクター、つまり自分である。
 
どんな媒体であれ、私たちは物語を見るとき主人公と同化して世界に没頭していく。物語は通常、主人公を中心として紡ぎ出されていくのだから、そのようになるのは当たり前の話。主人公に心動かされるほど、周りに集まるキャラたちが魅力的であるほど物語への没入度が深まっていく感覚を、誰もが一度は体験したことがあると思う。それが「おもしろかった」という感動につながっていくわけだが、もちろんクソ映画にそこまで要求しているわけではなく今は没入度のみの話である。
 
今作で主人公たる人物を考えるとするなら、終始ヘビと関わっていた元軍人で大胆なアリソン、慎重派グレイスのいずれか。だが残念ながらどちらか一人が突出して活躍する場面はない。人が減ったおかげで途中から自然とバディ感が出てくるものの、ダブル主人公と言えるほどキャラの役割分担が明確化されているわけでもなかった。
 
視聴者が感情移入するべき主人公の不在はヘビ映画でヘビが出てこないことと同じくらい重大な問題だった、ということでこの話はおしまい。実は、上記で毒づいておきながら製作側が今作の主役と考えていたであろう人物を把握はしている。グレイスだ。自分にはない強さを感じるアリソンに尊敬の視線を送ったり、行方不明となったジェイソンを探しに戻ることをかたくなに拒んだり、当初は消極的で臆病な性格を連想させる姿を見せていた彼女がクライマックスになると古代人のペトログリフを思い出し、ナタ1本でアナコンダに立ち向かっていくのである。アナコンダとの戦いを通じ成長を見せたのは彼女だけと考えると、あながち間違った推理でもないと思う。
 
クセの強さだけで見ればアリソンはクソ映画界のトップをはれる実力を兼ね備えている。この手の映画で初めて声を出して笑ってしまったほど情緒も行動もおっかしいんだ。グレイスたちと初対面であることから、今回のパーティに参加したのは軍隊仕込みのサバイバル技術を期待されてのことだと思われるが、騒ぐだけで一つも役に立たない。控えめなアナコンダにかかる見せ場までの道中を有能そうに見える無能の可笑しみで埋められていなかったら、飽きで完走はできていなかったかもしれない。
 
そして、終始介護されっぱなしだったマローン教授。私は彼がハーレムを作るためにこの島に来たのではないか、またはエリック・ロバーツに気を使いすぎたスタッフがハーレム設定を取り入れたのではないか、いずれにしろ彼にとってこのサバイバルはハーレムだったと見ている。男性陣は教授以外全滅しているのに女性陣は全員生存しているのがその根拠だ。3人娘の中でも一番カワイイ私のお気に入り・ベンジーを世話係として残したり二人でいちゃいちゃハイキングを楽しんだり、足を蜘蛛に咬まれたのも全部計算づくだったとしか思えない。最後のシーンは完全に介護スタッフに付き添われたおじいちゃんであったが、あなたのために薬を取りに行って死んだジェイソン、アダム、ついでにホアキンのことを忘れないであげてほしい。
 
まとめとしては、大小さまざまなヘビが登場するものの、視覚に訴える刺激が少なくて物足りない作品だった。登場人物が健全な学生たちしかいなかったことは新鮮だったかな。感慨深かったのは最後、ナイフ1本でアナコンダに立ち向かっていくシーン。そう、モンスターとの勝負はつきつめるとナイフになるのだ。正確にはナタだったが、日本が世界に誇るゲーム「バイオハザード」を遊んだことがある同志なら、郷愁にも似たこの懐かしい気持ちをわかってくれるだろう。見出しは最後まで見た私の心の声。はやりに乗じただけではないのだよ、この邦題は。