pu-log’s diary

たくさんの物語と出会うことを今年の目標とする。

正統派続編「ジグソウ:ソウ・レガシー」感想

あらすじ

遺体安置所の検視台の上に半裸の男。それは街中の公園で見つかった死体。死体を見つめる刑事のハロランとキース、検視官のローガンとエレノア。男が被っているバケツを外すと、顔半分がはがれ顎から上がない。首の皮膚はジグソウパズル型に切り取られている。伝説の殺人犯”ジグソウ”のやり口ー。殺害したのはジグソウの模倣犯か? 喉の奥から抜き出したUSBスティックをパソコンで起動すると、「ゲームは始まった。4人の罪人が犯した罪が償われるまで終わらない」その声はまさしくジグソウ。彼は10年前に死んだはずなのに・・・(パッケージより)

ジグソウ:ソウ・レガシー(吹替版)

 

簡単感想

2017年に製作された、ソウシリーズの8番目にあたる作品。密室に集められた5人の男女が理由もわからずデスゲームに参加させられ、事あるごとに自身の罪と向き合わざるを得ない状況に陥り、最終的にはミンチとなる。それだけであればいつものことで目新しくもないのだが、今作は物語の構成が見事であった。シリーズ化されたホラー映画はナンバリングが進むほど駄作になるのがスタンダード、そのような固定概念を打ち崩してくれる作品を引き当てられて得した気分。

私の評価は★4。印象が180度かわる終盤の爽快感は1作目に負けず劣らず。ただ遊びの仕掛けは甘いカナーと感じたので、残酷さを求めている人には物足りない内容かもしれない。

な、なんも言えねえ・・・!

語りたいのにネタバレになってしまうから何も言えない。それなら書こうとするんじゃないと言われても、観たからにはヤジを飛ばしたいのが人間というものだ。

これから見る人は事前情報を一切入れることなく視聴をはじめてほしい。謎が解明されていくことを例えて「パズルのピースがはまっていく」という表現がよく使われるが、まさにそれ。場面場面で挿入されていた意味の分からないシーンが終盤、たたみかけるように回収されていくときは「10時間熟睡して目醒めたみてェーなバッチしの気分」が味わえるだろう。
 
ソウに皆が心酔した理由は意外性への欲求にあって、理不尽なゲームはただの手段でしかないと私は思っている。2作目から手段に重きが置かれはじめ追いかけるのをやめたわけだが、今作はタイトルにレガシー(次の時代に受け継がれていくもの)とあるとおり、初代の作風を受け継いだソウらしいソウであった。
 
さて、物語には触れられないので今回の罪人が参加したゲームを紹介しつつヤジを飛ばしていくことにする。2作目以降は未視聴だが、ご飯のお供としてつまむにはちょうどいいと私が感じたとおり、検索する限りシリーズ中比較的ショック度は低めなようである。それと合わせ、わめき散らすことしかできない手のかかる女は序盤に消えるので、「やかましい! うっとおしいぞこのアマ!」と怒鳴りがちな紳士も心を落ち着けて見守ることができるだろう。あとは毎度のことで、おじいちゃんがこの大掛かりな仕掛けをいかようにして組み立てたのかに疑問を持ってはならない。たぶん夜になると小人があらわれるのだ。
 

今作のゲーム内容

1.強制回転ノコギリ切断
バケツをかぶらされた被験者たちの姿も可愛いオープニングアクト。首につながれた鎖が引かれる先に回転ノコギリが設置してあり、被験者が血を流すと回転が止まる仕組み。仕掛け自体は単純ながら、精神的にも肉体的にも効果は絶大。皆さんパニックを起こしているので、指先をちょっと切るだけでいいのに「血を流すのよッッ!」と言って無理矢理刃に押し付けられた人は必要以上のダメージを受けていた。
 
2.ロシアン酸注射
一人が指名され、3本中1本の当たりを引ければ勝ちというもの。引き続き鎖につながれたままなので、指名者が注射を早く打たなければ他の者は鎖で首つりをすることになる。指名者にもあらかじめ毒が注入されており、解毒薬の入っている当たりを引かなければどのみち死んでしまうという、個人的に今作No.1ハァハァトラップ。それにもかかわらず決断することのできない貧弱なメンタルの指名者に私なら空裂眼刺驚(スペースリパー・スティンギーアイズ)で活を入れるところだが、隣にいた人間が「俺様がヤってやるッッ!」と適当に選んだ注射をぶっ差し、結果として死亡した。
 
3.ワイヤートラップ
先ほど注射した俺様がジグソウの意向を無視して動き回った結果、床が抜けた先にあるトラップで片膝の下をワイヤーでぐるぐる巻きに固定される。罠に自ら飛び込んだようなものだが、このような危機感の足りない人間が一人はいてくれないとゲームが盛り上がらないからネ。注射の件といい、ジグソウの真に恐ろしいところは的確に人間性を見抜き、獲物を罠へと導く狡猾さだろう。被験者の人間性を把握するため調査を重ね、用意周到に計画を立てたことがうかがえる。
 
4.砂と刃物で生き埋め
罠に囚われた俺様を助けるため周囲を探っていた被験者たちがモニターの設置された小部屋に入った瞬間、扉が閉まる。それと同時に頭上から砂が降り注ぎ、生き埋めになるのを待つだけと思ったら合わせて刃も降ってきた。解除するには俺様の足元にあるレバーを引かなければならない。だがレバーを引くと同時にワイヤーも締まっていく。「引いて」「できない」の押し問答の末、俺様は片足を失った。自己犠牲の精神で行動した俺様はなぜ救済されないのか、と思うかもしれないが、この件はルール違反をしたことによる罰なので、ゲームとしてはノーカウントなのだ。
 
5.スパイラル穴
人一人入る大きさの逆円錐の内側に沿って、らせん状にゴム? が貼り付けてある仕掛け。バイクのタイヤで円錐を高速回転させ摩擦により肉をこそぎおとす、のかな? よくわからないが、よくわからないうちに被験者が中に吊るされ、仲間がバイクを止めようと試行錯誤するもズタボロのゾウキンになって死亡した。これまでの仕掛けは肉体だけではなく精神的負荷も大きいものだったが、こちらは威力を重視したためか一瞬で終わり。オリジナリティは高いものの、大掛かりのわりに費用対効果の低い仕掛けだった。
 
6.ショットガン
1丁のショットガンに1発の弾丸。生き残った二人の間におかれたそれをどう使うのかは、被験者に委ねられている。このゲームだけ別格に出来がよくて、人選によっては生き残れる確率も高かった。1作目を彷彿とさせるソリッドシチュエーションであるのもいい。
 
最後に、上記を書くのに仕掛けに名前があるのかネットを巡っていたら、「『ソウ』はめちゃくちゃ宗教的な側面の強いスプラッター映画」という興味深いコラムがあった。博識な人の言うことは何にせよ思考の糧になるので、お時間がある方はどうぞ。よりソウの世界を深めることができるだろう。
『スパイラル』は『ソウ』過去作からどう変化した? ジグソウの思想史から読む|Real Sound|リアルサウンド 映画部