pu-log’s diary

たくさんの物語と出会うことを今年の目標とする。

3月の読書記録

購入本

メインテーマは殺人/アンソニーホロヴィッツ

メインテーマは殺人 ホーソーン&ホロヴィッツ・シリーズ (創元推理文庫)
著者自身が主人公となり謎を解き明かしていくミステリ。実在の人物を実名で登場させる等その特性が存分に生かされていて、本国エンタメをよく知る人ほど面白く読み進められる構成になっていた。

犯行現場に残されたメッセージや一人ひとりの証言を繋ぎ合わせ真実をつきとめていくあたりは王道で、事件をホロヴィッツが複雑化させているせいか笑 寄り道は多い。冗長に感じる要因の一つ、登場人物がそれぞれの人生を延々と語るのは、作中でホロヴィッツが言う「登場人物の人となりに興味があるからだ」の信念に基づいているのだと思う。いかにも物語を紡ぎ手らしい考え方で、このやり取りのシーンは特に印象に残っている。ミステリとしてはホーソーンの言う「主題は殺人」が間違いなく正しいが、感動には人間ドラマが不可欠だ。そういう意味で、ミステリ慣れしていない人にもおすすめできる作品だった。

 

頬に哀しみを刻め/S・A・コスビー

頰に哀しみを刻め (ハーパーBOOKS)
このミス2024年海外編の1位作品。ミステリというよりハードボイルド小説、息子を殺された父親の復讐譚であり、息子のありのままを認めることができなかった贖罪の物語でもある。調査の過程で性的マイノリティの方々と関わっていく中、主人公二人は自身の行いを見つめなおしていくのだが、バディ・リーはともかくアイクに関してはもはや偏見の化身。差別される悲しみを知っていながら最後まで差別意識を消せなかった彼の姿に、一朝一夕で解決できるほど易しい問題ではないと言われている気がした。

息子の死の真相を追っていく過程では人種差別と性差別の現実を、私刑パートでは元アウトロー2人による圧倒的な暴力が描かれている。重いテーマで暗い気持ちに沈んだところを爽快感のある親父無双で盛り上げていく感じは嫌いじゃない。冴えない中年がいきった若者をぶっとばすのは最高に気持ちがいいのだ。
 

ストーンサークルの殺人/M・W・クレイヴン

イギリス、カンブリア州のストーンサークルで焼死体が次々と発見される。局部を切断され、拷問を受けたと思われる遺体もある中、ある被害者に国家犯罪対策庁の警察官・ワシントン・ポーの名前と「5」の字が刻み付けられていた。
ストーンサークルの殺人 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
イギリスの警察小説。正直、破天荒刑事であるポーのやり方には賛同できなかった。それなのにもう次回作が読みたくてうずうずしている。報連相をしないのは許せないが、信念のある男は嫌いじゃない。

犯人による無慈悲な制裁の背景には、私の予想をはるかに上回る鬼の所業が隠されていた。てめえらの血は何色だ、これで加害者に肩入れするなと言われても聞き入れることはできない。私は10000%犯人の味方をする。被害者が一気に増えるおかげで捜査はスピード感をもって進むが、点と線がつながる中盤まで今は誰の何を追っているのかチンプンカンプン、情報整理に苦労した。あと意外と飯テロ。ミートパイ、ラムシチュー、おいしそうな料理がたくさん出てきて、検索しながら読んだらおなかがすいた。イギリスでは日本と違い、ラム肉を日常的に食べる習慣があるようだ。
 

ブラックサマーの殺人/M・W・クレイヴン

殺されたはずの娘が数年を経て生還したことにより、殺人罪で収監されていた彼女の父親が釈放されることになった。サイコパスである父親が犯人であると確信しているポーだったが、主張は聞き入れられず冤罪を生んだ張本人として追い詰められていく。過去の捜査の洗い直しと新たな証拠を集め、仲間と共に起死回生をはかる。
ブラックサマーの殺人 ワシントン・ポー (ハヤカワ・ミステリ文庫)
ポーとティリー、フリンの絆がさらに深まった2作目。冒頭からピンチのポー。大丈夫なのはわかっていても、崖っぷちに追い詰められる主人公を見ると心臓が痛くなる。

作中でポーも指摘しているが、ハリウッドに洗脳されている私は今回の犯人をサイコパスにしては地味、と思ってしまった。しかしサイコパスの性質を持つ人は当たり前に普通の生活を行っていると言われれば、それもそうだ。一気にではなく一つひとつ謎が解明されていくので、ミステリ初心者としては前作よりわかりやすくて読みやすかった。前作でポーを快く思っていなかったギャンブルが心からの味方になってくれたのはとても嬉しい。

そして1作目に引き続き、またすぐ次が読みたくてカゴに入れてしまった。このシリーズ中毒性が高すぎる。
 

三体/劉 慈欣

三体 (ハヤカワ文庫SF)
国家に翻弄された女性の過去と謎の現象に襲われる現代の科学者たち、そして徐々に明らかとなる三体の秘密、鳥肌の立つ場面の連続で、壮大な物語にふさわしい密度の濃さだった。

評判どおりの面白さだったが、難解な場面が続いて、お気楽なことしか考えない私の脳みそはとても疲れてしまった。もう少し息抜きのできる人間ドラマパートがほしかったかな。目が読むのを拒否した箇所を流して飛ばして、「智子」のあたりで完全に白旗、もう全体像がわかっていればいいやという開き直りで何とか読み終えた。人類の反転攻勢は気になるが、次巻を手に取るには少し休憩が必要。流した部分は全部読んだあとであれば読み返せそう。