pu-log’s diary

たくさんの物語と出会うことを今年の目標とする。

推せる殺人鬼キター!「サバイバル・フォレスト」感想

あらすじ

兵役を終えバックパッカーとして旅をしていたベンは、旅先のパブで知り合った一人旅中の女性・ニナと意気投合し行動を共にすることとなる。最初は順調だったものの次第に意見の食い違いから溝が深まりはじめ、ついにベンが席を外している間にニナは他の男の車で先に出てしまった。翌朝、ベンのもとにニナを乗せた男からの脅迫電話が届き、彼女が誘拐されたことを知る。ニナを助けるべく指示通りに行動するベンだったが、油断したところを襲撃され森の奥深くへと拉致されてしまう。

サバイバル・フォレスト(字幕版)

2011年、オーストラリア産の映画。アマプラ★1しか評価のない作品を初めて見た。タイトルだけだと同名の別作品が出てくるので、監督の名前=ディオン・ボーランドも合わせて検索を行いましょう。
 

簡単感想

内容は人間を標的として狩りを行うマンハントもの。ジャンルの特徴として追われる側は丸腰であることが多く、物陰に隠れてやり過ごしたり裏をかいてだしぬいたりするステルス要素が魅力の一つ。その基本をちゃんと踏襲しているのに、現在アマプラでは最低評価が並んでいる。他人の評価を信用してはならないと見始めたが、開始早々に納得してしまった。
 
超々低予算であることを伝えてくるチープな映像、物語の抑揚のなさ、殺人鬼の迫力不足、言語の壁をこえて伝わってくる主人公の大根演技、自主製作・・・じゃないよネ?
 
だからといって見る価値なしというほどでもなく、心臓の弱い方でも安心して観ることができる低刺激のスリラーとして有りだと思う。あと殺人鬼が可哀そうな子で意外と推せる。私の評価は★2。そのまま見ると悪いところしかないので、皆さんの見たい欲が掘り起こされるようなポイントを述べていきたい。

 

ドジっ子属性の殺人鬼で白飯3杯いける

実は今作、2度見ると味わい深くなる。こんなクソ映画2度も見るなんてお客さんよっぽどの好きものだネ、と言われそうだが実際軽く2周して感じたのだから嘘ではない。
 
最初から違和感はあったのだ、やたら音楽がいいことに。冒頭、電車に揺られながら車窓を眺め、物思いにふけるベン。音楽もそれに合わせて哀愁漂う曲調なのだが、この時点ではもちろん誘拐が起きていないのだから、なぜこんなに物憂げな表情なのかはわからない。何やら落ち着かない感じ。
 
シーン変わってニナが誘拐されたと知り、ヴィンセント(犯人)の指示に従ってヒッチハイクを続けるベン。それだけなのに、ボーカル付きのやたら胸に沁みる音楽が流れてくる。あれ、まだ何も始まっていないという認識は残像か? 開始16分ごろから流れるので、お時間のある方は全編見なくてもいいからこのシーンだけでも見てほしい。ここだけ見たら完全に文芸作品のロードムービーだから。
 
その後も一方的に追いかけられる場面ではスリルある音楽が、際どい攻防になればそれなりの音楽が流れ、映像では伝えきれない緊迫感をほどよく盛り上げてくれる。音楽が映像を引き立て、映像が音楽に共鳴する、おお・・・何とすてきなマリアージュ。ただしバランスがとれていないことによる座りの悪さはいかんともしがたい。映像がむちゃくちゃチープすぎて違和感がすごい。
 
そして1週目ラスト、作中の疑問を解消する仕掛けが明かされ、ベンのことを見直した気持ちのまま最初から再見した。そうしたら真相フィルターがかかったおかげか違和感が解消されたのだ。最初の悲しい音楽も、途中の憂いを帯びた歌声も、しっくりくるのだ。もしかして2週目を想定して音楽を作りました? だとしたら生き急ぎすぎ。
 
最後の種明かしは本当におっ、と思わせてくれるので、できたらロードムービーシーンで止めないで通して見てほしい。なお、ここまでの説明を信じて「ホラ吹くのもいいかげんにしろこのメス豚チャーシュウが」と思われても責任は持ちません。

 
 
さて、続いて今作がシリアスコメディ()と化している理由の確信的存在・殺人鬼ヴィンセントのチャームポイントについて述べていきたい。大抵、連続殺人鬼といえば狡猾で残忍、性格は冷徹で、被害者の先の先を読んで無感情に殺していくのが一般的であるが、今作のヴィンさんは違う。感情の塊で、素直な人柄を隠すことなくむちゃくちゃあせる。むしろ丸腰で狙われているベンのほうが冷静。
 
しかも、これまでのハント実績が誇張としか思えないほど銃の腕が悪い。ベンが射程距離に入り狙いを定めて銃を撃っても、全然当たらないのだ。「お前の命は俺次第だ」と決めゼリフを言ったあとに「その腕じゃトラックにも命中しない」と正論で返されていて、すごく可哀そう。
 
もうね、根がいい子なのよ。追いかけっこをしている山は自分の所有地なんだろうね、ベンが逃げ込んだ谷に住む老人が「この谷には絶対入ってこない」て言っていたことからするに、他人の土地に入ってはいけないと躾けられてきたのだと思う。ベンが約束を破るたびに「お前はすぐ信頼を裏切る」と拗ね、懲りずにまた約束事を提案することからも、育ちの良さがうかがえるもの。
 
「お前のすぐ後ろにいるぞ」なんて秒でバレる嘘をついても当然ベンは信じないから、地団太を踏んでくやしがる。いつの間にか生意気なベンより目標に向かって一生懸命突き進むヴィンさんを応援するようになっていた私は、ベンが仕掛けたトラバサミにかかったあと、足を引きずりながら歩く姿とかもー見ちゃいらんなかった。悪ぶっているけど驚くほどピュアなの。そしてドジっ子。どこかで見た感あるナーと思っていたら少年漫画のラブコメにこういう子いた。
 
まとめとしては、そのままではなく少し視点を変えて見てもらえると、いいところがそれなりに見えてくるはず。実際、ヴィンさんはベンのことが好きとしか思えないんだよね(真顔)ちゃんとラブコメとして作ればいい物語になりそうなのに、もったいないなと感じました。