pu-log’s diary

たくさんの物語と出会うことを今年の目標とする。

今日の一冊:クリス・ライアン SAS ダニー・ブラックシリーズ

クリス・ライアンのダニー・ブラックシリーズがunlimitedに並んでいたので読んだのだが、こんなに面白いのに読み放題でいいの? と思うほどハマってしまった。

ダニーが所属するイギリス陸軍特殊空挺部隊SAS(Special Air Service)はレジメントとも呼ばれ、他国の特殊部隊(露スペツナズや米デルタなど)のお手本になったらしい。職務は対テロのほか、要人警護や人質救出、破壊工作や偵察など多岐にわたり、高い能力が要求される。

物語のウリは、元SAS隊員の著者による実践経験を生かしたリアルな描写。武器や戦術的行動の知識はもちろん、実際に見たであろう戦場の生々しい風景も詳細に表現されている。そこにエンターテイメント性が加わるのだから、面白くないわけがない。

翻訳ものはあまり読まないので他の作品と比較はできないが、すごく読みやすいし、訳者はとても勉強されている印象。黒幕は誰なのか? なんてミステリ要素もあった。

第1段 戦場の支配者 SAS部隊シリア特命作戦(2013、2015)

戦場の支配者 SAS部隊シリア特命作戦 上 (竹書房文庫) 戦場の支配者 SAS部隊シリア特命作戦 下 (竹書房文庫)
リビアでの任務を終えたダニー・ブラックに緊急招集がかかった。現政府と反政府勢力との内戦が続くシリアへ重大任務をおった情報部員を入国させるため、SASの護衛が必要とのことだった。ダニーは家の事情から休暇を要請したが、この作戦にブラックははずせないとあえなく却下され、一行は極秘裏にシリアへの潜入を試みる。

ダニーはこの時点で23歳の設定(たぶん)。最初ということで家族や生い立ちのこと、今後の物語でも関わってくる登場人物たちとの出会いもあるので、こちらから読み始めて正解。

第2段 裏切りの戦場 SAS部隊イエメン暗殺作戦(2014、2016)

裏切りの戦場 SAS部隊イエメン暗殺作戦 上 (竹書房文庫) 裏切りの戦場 SAS部隊イエメン暗殺作戦 下 (竹書房文庫)
ロンドン・パディントン駅で爆弾テロ事件が起こった。急きょ精鋭ぞろいと言われるE中隊に転属となったダニーとスパッドは、MI5、MI6、CIA合同緊急対策委員会の指示により、テロ実行犯を事故に見せかけ次々と暗殺していく。残すは中心人物アブ・ライードのみとなり、始末をつけるべく逃亡先のイエメンへスパッドと二人で向かったのだが・・・。

前作で重傷を負ったグレッグのその後がわかるのは連作のいいところ。レビューを見ると評価が低いようだけど、SAS隊員の仕事が傭兵にとどまらないところが前作より描かれていて、私は楽しめた。

第3段 神火の戦場 SASナイジェリア対細菌作戦(2015,2017)

神火の戦場(しんかのせんじょう) SAS部隊ナイジェリア対細菌作戦 上 (竹書房文庫) 神火の戦場 SAS部隊ナイジェリア対細菌作戦 下 (竹書房文庫)
ナイジェリアでボコ・ハラム(ナイジェリア北部を拠点に活動するイスラム過激派集団)に拉致された高等弁務官救出のため行方を追うSAS部隊。チクンダにたどりつき、激しい戦闘の最中隊員が見つけたのは、白い防疫服と体中膿疱に覆われた現地人と思われる死体の山だった。謎の病原菌、ネットに浮かぶメッセージ、カリフ、すべてが結びつくとき、英国を標的とした恐ろしいテロ計画が明るみになる。

ダニーと相棒スパッドは別行動。様々な謎がひとつに収束する高揚感は4作品中最高かも。個人的にスパッド好きなので、戻ってきてくれて安心した。

第4段 血泥の戦場 SAS部隊イラクIS司令官襲撃作戦(2016、2019)

血泥の戦場 上 (竹書房文庫) 血泥の戦場 下 (竹書房文庫)
英国へのテロを計画しているIS(イスラム過激派組織イスラミック・ステート)構成員から入手した情報をもとに、IS司令官の身柄を確保すべくSAS部隊はイラク北部に極秘潜入する。現地はISに加え、米軍、ロシア軍が目を光らせる危険地帯。誰にも存在を知られてはならない四面楚歌の中、決死のミッションが始まる。

SAS部隊、国境越えする難民、皇室護衛に転任したトニーそれぞれの話は没頭する。だが、終盤はいつものようにダニーが暴走、SAS部隊と関係ない話が長すぎて、大事な〆が盛り上がらないまま尻すぼみで終わった印象。


さて、現在翻訳されている4作読了したわけだが、シリーズものを読むにあたり、私は重大なミスを犯した。主題が特殊部隊の活躍なので仕方のないことなのだが、細かい部分が違うだけで、やっていることは同じなのだ。

どの作品を読んでも潜入場面はヒリつくし危機を脱出するハラハラ感もあるし、散らばった謎が解けていくおもしろさもある。でも、さすがに飽きた。単発シリーズものは続けて読むものではない。読み放題がいつ終了するのかわからないということもあり、意地汚くなってしまったのがよくなかった。

重ねて言うが、これは私自身のミス。作品は間違いなく面白い。戦場での注意事項も興味深かった。カービンの銃床は肩にしっかり押し付けろ、クレイモア地雷は敵に向ける方向を間違えるな、OP(監視所)の排泄物は持ち帰れ、携帯糧食はただの燃料にすぎない味は気にするな飲み込め、などなど、特に排泄物を持ち帰るのは目から鱗。確かに、犬を使われたらすぐ居場所がバレてしまうよね。

次作の公開が待ちきれない。血泥~のあとがきで訳者がwarlord(麻薬王)と言っていたし、ダニーの兄カイルがでてくるかもね。

余談

SASを題材とした小説と言うとクリス・ライアンかアンディ・マクナブ、と言われるほど有名らしいのだが、この二人、仲はあまりよろしくないそうだ。湾岸戦争時代、ブラボー・ツー・ゼロ隊で一緒だったらしく、クリスは脱出成功した人、アンディは捕虜となった人として、それぞれ回顧録を執筆している。小説ならクリス、人間性ならアンディ、と、どこかで見た気がする。